松岡豪之・鉄人の肖像|キャスティング 

2014/05/31
総合 テクニック
美しく、力強く。そのキャストは日々の鍛錬により生まれる。その昔、釣りはオリンピック競技だった。

キャスティングという“スポーツ”

「体全体を使わないとキャストは上達しない」。彼の代名詞ともいうべきキャスティングについて尋ねられると、松岡豪之はまずこう答えるのだという。初心者アングラーは往々にして腕の力でルアーを投げようとする。だが、腕の力だけでは出る飛距離に限界がある。「野球しかり。ゴルフしかり。何かを遠くに飛ばす、速く投げる競技では下半身の動きが非常に重要になります。腕の力だけでなく、腰をひねりながら重心を前から後ろにずらしてスイングスピードを稼がないと飛距離はでません。キャストを上達しようと思うのなら、腕の力、体のひねり、体重移動を意識することが大切です」。

もちろん、その力を最大限にロッドに伝えようとするのなら、下半身で地面をしっかり固定させないといけない。下半身がフラついていては、どれだけ体全体を使ったキャストをしても力が分散して逃げていってしまう。「僕がスクワットや体幹トレーニングを欠かさないのはそのためです。不安定な釣り場や船上でもしっかり体をホールドさせるには強靭な下半身が必要なのです」。

 

ルアーを投げるために“指”を鍛える意味

もうひとつ忘れてはいけないことがある。何十グラムもある大型のトップウォータープラグを、体全体を使って驚異的な初速で投げる。バックキャストからロッドにルアーの重さが乗ってその力が最大限になったとき、爆発寸前のエネルギーを受け止めているのはロッドだけではない。どこだろうか。それは「指」だ。利き手の人差し指がラインをめり込ませながらその力に抗う。その力を受け止めるため、松岡は指の力、握力をも鍛えている。一時は握力が80を超えたこともある。この握力がロッドをホールドさせ、体全体で生み出したエネルギーをロッドに伝える役割を果たしている。

こうして松岡のキャストは生まれる。そのキャストを見ていると私は、彼がアスリートであること、そして釣りがスポーツであることを感じる(同時に決して到達できない領域を見るようで、少し悲しい気持ちにもなるのだけれど)。だが、体全体を使ってキャストすることを意識すれば、キャスティングフォーム、ルアーの飛距離は目に見えて変わっていくと松岡は言う。いきなりあのロッドのしなりを、あの飛距離をと求めず、まずはそんなところから。読者の皆さんも次の釣行では、そのあたりを意識的に試してみてはいかがだろうか。

文=F!編集部